目的が違いすぎる。そして使命も違いすぎる。そして両方とも勘違いしやすい。
河井克行容疑者(57歳)、妻・案里容疑者(46歳)【2020/06/23時点】。あ、この男の人、私と同い年だ。うちの妻より10歳も若い女性を妻にしてるのか。うらやましい(笑)。私は芸能人でも政治家でもないが、政治家と芸能人の違いはわかっているつもりである。政治家というのは政治を司る人。国民の生活を守り、豊かな国を築くために国民をリードしてくれる人。自分のことよりも、皆の利益を優先して考えられる人。等々、表現は様々だが、簡単に言うと「偉い人」と言えるだろうか。一方で芸能人というのは民衆を楽しませてくれる人。民衆のストレスを和らげ、人生に深みや面白みを与えてくれる人。自分も楽しみながら、他人の喜びも一緒に実現してくれる人。等々、いろんな言い方はあるが、一言でいうと「面白い人」「愛すべき人」と言えるだろうか。
職業に貴賤はないが、しかしさすがに、政治家と芸能人であれば政治家の方が尊敬できる職業と思う。芸能人は、政治家が「豊かな生活」を保障してくれてこそ、活動できる職業ではないだろうか。スーパーポジティブな手越君も、政治がしっかりしていればこそ、安心してネット会見できるというものだ。芸能人にかかわらず、そういう職業は多いと思う。エンタテインメントに関係する職業は、今回のコロナ禍でも明らかになったように、政治の方向性に最も左右される職業と思う。そう考えれば、政治家というのは芸能人よりも、ほかのいろんな職業よりも貴重な職業であり、もはや職業とは呼べないような「仕事」なのかもしれない。
河井克行という男が政治家になって何をやったか、あるいはやらなかったか、そしてそれにどれだけの独自性と有効性があったのかということが、今回の事件の焦点になると思う。「買収」は悪行だが、それに勝る「政治」を行ったのであれば、それは単に公職選挙法違反という単純な犯罪事件にとどまらず、現在の司法でさばききれない重大な問題が、政治に潜んでいることになる。そしてその行為は、現在の司法の欠点を浮き彫りにするために犠牲になった「正義」の政治家として、後に名を遺すかもしれない。その犯罪行為自体を罰することは、秩序のために致し方ないかもしれないが、国民にとって、むしろありがたい「英雄的犯罪」と言えるだろう。
見るも無残なほったらかし。真の孤独とは孤独に気づかないことである
しかしどうやら、この男はそんな偉業は成し遂げていないし、単にやってはいけないことをやっただけのようである。志を同じくするはずの党員から彼を擁護する弁は一言も出てきていないし、ちょっと調べてもエポックを画するような仕事は何一つしていないように思われる。立件されてからのこの夫婦の言動は、まるで、道路の隅っこで気味悪く、あるいは滑稽に跳ね回っているトカゲのしっぽのようにしか見えない。
政治家は芸能人ではない。単に人気があればそれでよいというわけにはいかないと思う。民衆を楽しませるのではなく、国民の生活を守るのだ。「票をお金で買ってはいけないし、それだけ(票をとることだけ)を目的にしてはいけない。」こういうと、「きれいごとではすまされない、生きていけない」と普通は言う。そして、そういうといかにも物知りで、裏に何かあるような、それを知っているような賢そうな雰囲気が醸し出されて、周りの普通の人は黙ってしまう。
しかし私は、人生はもっとシンプルだと思っている。きれいごとを実践していかないと、人生もきれいにはならないと思っている。何か誰も気づかないような秘策があるように思うかもしれないが、そんなものはきっとない。しかし普通は、あると考える。なぜなら、ないはずがないと信じ込んでいるからだ。普通は、「ないはずがない。見えてないだけだ」と考える。しかし、見えないものはないし、見えているものだって本質的には意味がないということに気づけば、見えもしないものを求めるなんてそれこそ意味がないことに気づくはずだ。
きれいごとを本気で実践するようにならないと、絶対にきれいにならない。それが証拠に、そんなきれいごとでは生きていけないといいながら、いつまでたっても世の中、政治をきれいにすることを目指している。誰一人としてきれいにならなくてもいいのだとは言わないし、言っても賛同する人は極端に少ない。きれいごとでは生きていけないなんて「わかったようなこと」を言うのではなく、一度みんなで、本気できれいにしてみよう。間違ってたら、いつでもやり直せばいいのである。世の中(人生)はやり直しがきかない、などと大げさに考える必要はないと思う。どっちにしろ、大した意味はないのだから。
さらに普通は、政治家も芸能人も勘違いしやすい。本来の使命を忘れてしまえば、普通でもわかるアホに簡単になりえる。できもしないことをやりもしないうちからまるで成し遂げたように思っているのは本人だけだったりする。当選、あるいはデビューしたときから裸の王様の行進は始まるのである。
人気が欲しいだけなら、芸能人を目指せばいいと思う。政治家は「人気」を得ることを目的とせず、「世の中をよくすること」を目的としよう。本当の政治家はそう思っているはずだ。それを素直に実践すれば、金なんか使わなくても「人気」は出てくると思う。本当の自分に従おう。もちろん、普通の人にはこんなこと簡単にできることではないのだが。