神格化の意味、理由とは?
神格化とは天体や自然、何らかの実在、個人、集団といった具体的な対象を神、もしくは神の域にあるものとして扱ったりみなしたりすること。(By Wikipedia )と言うことだそうだ。一方私はそもそも神は存在しないと思っているので、「神格化」自体に疑問を持っている。※神は存在するかについての記事はこちら。
最近の傾向として「~は神」とか「~は神ってる」などという表現も流行している。私のような人間には滑稽にしか思えないのだが、なぜ人は「神格化」したがるのか?という疑問が沸き起こる。そして同時に、「神格化」こそが人間が無から生じた証拠であると思うのである。
人間は本来無であったのに、目覚めればいきなり「この世界」の中に自分がいることを発見するのである。さてどうしようかと、人間はこの世界で生きていくお手本を探そうとする。赤ん坊のうちはとりあえず「親」を目標に「真似」するが、それも15~20年も経てば化けの皮が剥がれる。かといって自分自身の未熟さも自分が一番よくわかっているので、自分の身の回りの自分以外の何か、もしくは誰かを目標に置きたくなるのだと思う。それが「神格化」の正体であり、そのような思考形態こそが、人間は本来「無」であった証拠だと思うわけである。
普通の人は、何か目標や目印を置いておけば、人生は楽に生きられるような気がするのだろう。何か、もしくは誰かを目標において、その「真似」をすれば他に何も考えなくていい。これは、幼児時代の「生き方」と同じで、「成長痛」を感じなくて済むのである。考えれば脳が疲れるので、できるだけ脳を使わずに生きていきたいという人間の欲求の表れの一種と私は考える。
そしてそのような思考形態をもつ遺伝子は、脳を酷使する遺伝子よりも長生きすると考えられるので、子孫を多く残すことに成功しやすく、現代人の特徴の中に息づいているのだと思う。
「神格化」が起こるもう一つの理由は、本来人間は自分しか信じられないことにあると思う。
自分以外のものや人は、自分に何の説明もなく強引にそこに存在しているにもかかわらず、親や学校の先生、社会などは、それ、もしくはその人とうまくやることを強制してくるのである。そもそもそんな得体のしれないものとうまくはやれないに決まっているにもかかわらずである。
その無理難題を解消するためには、とりあえずそのものや人を「神格化」して、自分の欲望の上位に置くしかない。そして自分は、自分が信じられるモノだけに集中できるように、それ以外の雑多なものはとりあえず十把一からげに「敬っておく」ことにしているだけなのである。
つまり、本来人間は自分しか信じられないのに、人生においては自分の知らないこともうまくこなしていく必要があるから、手っ取り早く自分以外の何かを「参考」にしたくなるのである。そして「誰々」ならどう考えるだろうとか、「何々」ならどんな風になるだろうとか仮想して生きる方向性を安易に決めてしまっているのである。
だからこそ、自分が「神格化」しているものを否定するものがあれば、人は徹底的に、時に感情的に反論する。「神格化」は人を思考停止させ、盲目的に行動させる原動力となりえるのである。
要するに「神格化」することによって別格化し、ある意味自分の人生から隔離することによって、ある意味「幼稚に」あるいは「利己的に」生きていけるようになる。「神格化」は人生を快適に(手抜きをして)生きる手段となりうるのである。
「神格化」という欺瞞を避け、自分を生きる方法とは?
しかし「人生に生きる意味はない」ことを知り、「神など存在しない」ことがわかった人は、人生を丸ごと受け入れるしかないことがわかるのである。「絶対真理」などなく、すべてに自分が意味付けをしていくことを人生の生きる意味としなければ、人生の生きる意味はどこにも転がってはいないのだから、どんなものも、どんな人も「神格化」はしないし、自分の人生の意味を簡単にごまかしたり、放棄したりはしないのである。
そして同時に他人の作った人生の意味、そして「神格化」された意味さえも、おそらく興味をもって関わりたいとは思わないだろう。他人の作り出す「意味」など、自分の人生にとっては何の「意味」もないことを知っているからだ。したがって、普通の人が「神格化」した対象に対して異を唱えることもないのが、自分で自分の人生の意味を決めている人の態度である。
従って、普通ではない人の生き方としては、世の中の何ものも「神格化」しない生き方がいいと思うのである。絶えず「吟味」する心をもって、言ってみればある意味自分自身を「神格化」し、かといって、自分のようなあいまいな存在価値を他人に押し付けたりすることもしない生き方がいいと思うのである。
静かに自分に基づいて生きていくことこそが、素直に自分と向き合って生きていく方法であり、自分に正々堂々と責任を負う生き方だと思うのである。